デオパー31
(……天使がここにいると、何か問題なのか?)
悪魔がいるのに天使がいると何が不都合なのか。魔術師でも、狂信者でもなく、異端種でもない幸一にはわからんだろう。
「神は基本的に、『祝福の地』にいる者を地上に遣わしたりはしないの」
割り込んできた声は、女、アストレス。声は先程と比べると弱冠小さい。
「基本的に?」
問いに、女は俯いた。
(つまり、こいつは墜とされたのさ。神によって)
意思を奪われた、『墜天使』。それがこの女の正体か。
(……どおりで『意思』を喰らっても、生きている訳だ。俺が喰らった『意思』は、『神』がこの女の自由を奪うために込めた『意思』か。大方、罪の『清算』のために、自動的にオレのような存在を殺せ、とインプットされたんだろうな)
(つまり、俺を殺そうとしたのは、こいつの意思ではない?)
そうだと言っているだろう? 理解力が足りんな。
しかし、こんなことはオレが『絶望の断崖』を越えてこの世界にやってきてからの五百年で初めてのことだ。何しろ一つの生命ないし物体に、二つ以上の『意思』があるなどと誰が考える?