グビル
腕を組み、女は探るようにこちらを見る。
先程までの気弱そうな視線はどこにいった? 立ち直りが早いのか、単純なのか……
「……少なくとも、自分の意思でないのは確かだ。俺が物心ついた時には、すでに巣食っていたからな」
ああ、そうだ……オレは、こいつの中に封じられたのさ……忌々しいことに。
「追い出すことはできないの?」
「悪魔が巣食っている以外、知識的には一般人と大して変わらん俺に、そんな方法がわかると思うか?」
違うな。魔術師だろうとそんな方法はわからんさ。
お前を殺し、解放された結果、弱ったオレならば簡単に殺せると思っているあの愚か者どもにはわかるまい……どうしようもなかったから、手練の魔術師が数人掛りで九条幸一という赤ん坊にオレを封じざるをえなかった事実を。
「ん〜……それじゃあ」
「とにかく、体が回復したらこの家を出ろ。俺に近づくとろくなことが無い」
真剣に悩み始める女を尻目に、幸一はぶっきらぼうに告げるのみ。
「ちょっと、待ちなさいよ! そんなの出来る訳ないでしょ!」
幸一は一言、『何故』とだけ問う。
「そんなヤバイのが巣食っているなら放っておく訳にはいかないわよ。こう見えても天使なのよ、あたし?」
無防備に近寄る仕草からは、単なるバカにしか見えん……そんなヤバイ悪魔が巣食っている相手に、こんな隙を見せるか普通?
「解放されたこいつを仕留められると言うのであれば、俺は殺されても構わんぞ?」