デビル39
「ですが、どこも最初は『検討させて頂きます』と言ったのに、翌日には『お引き受けできません』と、七つの探偵事務所から断られました……!」
……やっぱりか! だが、どういうこった?!
「お願いです! もう頼れる人がいないんです! お金は相場の二倍、いえ、三倍お支払いいたします! どうか、どうか……!」
まず俺は、師匠に助言を求めるべく、携帯電話を入れたんだが……
「この電話番号は、現在使われておりません」
くそ……! また連絡もしないで勝手に携帯変えたのか、あの放蕩人は!
……どうする? この件はかなりヤバそうだ。危険という臭いがプンプン匂ってきやがる。師匠なら、こんな時、どうする?
二つ返事で引き受けそうだ……あの人、義理と人情に弱いし、正義感の固まりだし……師匠の対応の仕方は俺の参考にはならん。
何せ俺の信条はビー・クールなのだ。冷静さが売り……にしたいものだ。
しかし……あと一週間もすれば飢え死にしそうだ……この問題を引き受けないで、どうやって生活していくか……バイトするしかねえだろうな……まあ、命には替えられねえ、って師匠も言ってたし……ああ、でもあの人が一番自分の命を考えてねえような……
じゃあ、金銭は考えないで……この件をどう思う? ……ヤベェ……けど、あの親父さんにはどう言う? ヤバそうなので手を引きますってか? ……やつれてたな、あの親父さん。娘さんも中々かわいいし……寝覚めが悪くなりそうだ……
何より……あの親父さんをこんなふうにした犯人が許せん……警察が見逃そうが、神様が許そうが……俺がとっ捕まえてやる!
俺は受話器を取り、親父さんから渡されたメモに書かれた番号を押す。
「もしもし、世良探偵事務所です。娘さんの件ですが……」
親父さんがゴクリと生唾を飲み込む音が受話器に聞こえてきた。
「お引き受け致します。これからより詳細な資料を受け取り御宅に向かわせて頂きます