ウィスパ
一週間前、『……三桜さん、あいつには、関わらない方が、いい』と田村君が言っていたのは……クラスで彼に誰かが近づかないようにするため。彼が知っているだけで十人以上死に、自身も実体験していれば……あたしは、もう何も言うことが出来なかった。
「……悪魔が巣食っている、か」
そのことが本当かどうかを、田村君に問いただしてみると、彼は首を横に振り、わからないと言いつつ、
『実は……僕の場合、あいつのことを抜きにしても、幼児体験があるから……』
それは何? と聞いて見ると田村君は苦笑し、『多分幻覚か何かだよ』と言うだけで、結局はぐらかされてしまった。
『歩く死神』、か……科学的な根拠はない。状況証拠もない。
ただそこに、井端君がいたというだけで……でも、九条君自身は周りの人を遠ざけていて……なんだかなぁ……何をどう解釈してどこまで信じれば良いのか……
「……あれ?」
……マズイ。九条君のことに没頭しすぎてしまった。あたしはゼンゼン知らない路地裏に足を進めていた。
「本当に、なんだかなぁ……はぁ」
来た道を引き返そうとして……誰かが眼の前にいた。あたしはなんか、その時の気分がよくなかったから、足元に眼を落として。
……急に、体が動かなくなった……! 何が起こったのかと思って顔を上げようとするけど、それすらままならない……!
下を向いていたあたしは、ブラウスの胸元が血に染まっていくのを……首筋から誰かが血を吸ってるのを、見た。
ダメだ……もう、意識が……